データ検証のデータコラム

地方競馬も「夏は牝馬」?
季節×性別を全レースで検証

集計:2021年〜・地方競馬約7.3万レース(2026年6月時点の集計)

公開:2026年6月20日 • 約7分で読めます

この記事の要点
  • 「夏は牝馬」は地方でも本当。牝馬の勝率は冬の7.3%台から、夏(8月)は10.1%へきれいに上昇する。
  • 牝馬は通年では牡馬に劣るが、その差が夏だけほぼ消える(牝と牡の勝率差:冬3.9pt → 夏0.8pt)。
  • しかも夏の牝馬は単勝回収で牡馬を上回る(牝73% vs 牡71%)。市場がまだ夏の牝馬を買い切れていない=妙味あり。

「夏は牝馬を狙え」——競馬を続けていると、どこかで耳にする格言です。暑さに強いのは牝馬で、夏場は牡馬が消耗する、というのが定番の理屈。馬券を買う人なら一度はこの言葉に頷いたことがあるはずですが、その一方で「本当にそうなのか、なんとなく言われているだけでは」と感じる人も多いのではないでしょうか。

これは中央競馬でよく言われる話ですが、地方競馬でも本当に成り立つのか。地方競馬の全レースで、月ごと・季節ごとに牝馬の成績を調べました。なお、牝馬しか出ない牝馬限定戦は除外し、牡馬と牝馬が同じレースで走る「混合戦」だけを対象にしています(牝馬限定戦を入れると牝馬の勝率が水増しされてしまうため)。格言が当たっているのか、当たっているならどの程度なのか、そしてそれが馬券の役に立つのか——順番に見ていきます。なお、性別だけでなく夏は1番人気が崩れやすいという季節の波もあり、夏は人気と性別の両面で見直しどころが増えます。

牝馬の勝率は、夏にきれいな山をつくる

まず、混合戦における牝馬の勝率を月別に並べたのが下のグラフです。

1月
7.3%
2月
7.3%
3月
7.4%
4月
8.1%
5月
8.6%
6月
9.1%
7月
10.0%
8月
10.1%
9月
9.6%
10月
8.6%
11月
8.2%
12月
7.9%

見事な山型です。牝馬の勝率は冬(1〜2月)の7.3%を底に、春から上がり始め、8月に10.1%でピーク。そこから秋・冬にかけて下がっていきます。同じ牝馬でも、冬と夏では勝率が3ポイント近く違う——「夏は牝馬」は、地方競馬でもはっきり数字に出ていました。

注目したいのは立ち上がりの早さです。牝馬の勝率は梅雨入り前の5月(8.6%)からすでに上向き、6月(9.1%)にはっきり伸びます。つまり「真夏になってから」では少し遅く、初夏のうちに先回りして牝馬を見直すのが、まだオッズが甘いうちに妙味を取るコツ。一方で9月(9.6%)はまだ高水準ですが、10月(8.6%)から失速が始まるので、秋が深まったら通常評価に戻していくのが目安です。

夏は、牡馬との差が「ほぼ消える」

もっと大事なのは、相手(牡馬)との比較です。混合戦である以上、牝馬は牡馬と直接戦っています。季節ごとに、牝馬と牡馬の勝率差を見てみましょう。

季節 牝 勝率 牡 勝率 勝率差
春(3〜5月) 8.1% 11.3% -3.2pt
夏(6〜8月) 9.7% 10.5% -0.8pt
秋(9〜11月) 8.8% 10.8% -2.0pt
冬(12〜2月) 7.5% 11.5% -3.9pt

牝馬は通年では牡馬に勝率で劣ります(差はすべてマイナス)。これは自然なことで、力関係としては牡馬が上です。ところが——その差が夏だけ大きく縮みます。冬は牝が牡に3.9ポイントも離されるのに、夏はわずか0.8ポイント差夏の牝馬は、牡馬とほぼ互角まで詰め寄っているのです。

つまり「夏は牝馬」の正体は、牝馬が突然強くなるというより、夏は牝馬と牡馬の力が拮抗する(=牡馬の優位が消える)こと。逆に冬は牡馬が圧倒的で、牝馬は明確に割引が必要、ということになります。

最大の発見:夏の牝馬は「回収率」でも牡馬を上回る

勝ちやすさだけでなく、儲かるかも見てみます。ここが今回いちばん面白いところです。

牝馬 牡馬
夏・単勝回収73%71%
冬・単勝回収58%74%

夏の牝馬の単勝回収率は73%。同じ夏の牡馬(71%)を上回っています。回収率はオッズ(人気)を織り込んだ数字なので、これは「夏の牝馬は、強さのわりにまだ買われ足りない」ことを意味します。市場は「夏は牝馬」を知ってはいても、オッズに反映し切れていない、というわけです。

反対に冬の牝馬は単勝回収58%と全季節で最低。勝てないうえに回収率も低い、二重に手を出しにくいゾーンです。「牝馬は通年同じ」ではなく、夏は買い・冬は消しと、季節で評価を変えるべきでした。

なぜ夏に牝馬が走るのか(解釈)

ここからはデータではなく解釈ですが、理由はいくつか考えられます。

  • 牡馬が夏に消耗しやすい。体が大きく力に頼る牡馬は、暑さでパフォーマンスを落としやすい。馬体重が落ちて食いが細る夏負けは、馬体に余裕のある大型の牡馬ほど出やすく、相対的に牝馬が浮上します。年齢や性別といった馬そのものの属性で買えるかどうかは高齢馬・性別の検証でも掘り下げています。
  • 牝馬は季節で上向きやすい。春〜夏は牝馬のコンディションが上がりやすく、毛づやや気配の良い馬が増えます。これも夏に牝馬を見直したくなる背景のひとつです。
  • 軽い馬場との相性。夏の乾いた軽い馬場は、パワーよりスピードや身軽さが活きます。重馬場では牡馬のパワーが効きますが、時計の出る軽い馬場では体の軽い牝馬が前へ行きやすくなります。

いずれにせよ、結果として夏は牝馬と牡馬の差が縮む——これがデータの示す事実です。ここで挙げた理由はあくまで解釈であって、どれが主因かを数字で切り分けたわけではありません。ただ、複数の要因が同じ方向(夏に牝馬を後押しする方向)を向いているからこそ、これだけきれいな山型が出るのだと考えると腑に落ちます。

実践:季節で牝馬の評価を変える

  • 夏(特に7〜8月)は混合戦の牝馬を見直す。牡馬相手でもほぼ互角。人気が足りなければ妙味になる。
  • 冬の牝馬は素直に割り引く。勝率・回収率とも最低。牡馬相手の混合戦では評価を下げてよい。
  • 牝馬限定戦は別の話。本記事は混合戦の数字。牝馬同士なら季節に関係なく必ず牝馬が勝つので、この「夏は牝馬」は当てはまらない。
  • 「夏=全部牝馬」ではない。あくまで牡馬との差が縮むという話。最後は個々の馬の力・適性で判断する。

よくある誤解と注意点

この格言は便利なぶん、雑に使うと外し方も派手になります。誤解しやすいポイントを整理しておきます。

  • 牝馬限定戦と混合戦を混同しない。「夏は牝馬」が効くのは、牡馬と牝馬が同じレースで戦う混合戦の話です。牝馬限定戦は全頭が牝馬なので必ず牝馬が勝ち、季節の話は当てはまりません。出走表で「混合戦か牝馬限定戦か」をまず確認しましょう。
  • 「夏だから」だけで買わない。差が縮むといっても、夏でも牝馬は牡馬にわずかに届いていません。割引を外す材料であって、力の足りない牝馬を無条件に持ち上げる理由にはなりません。
  • 人気と妙味はセットで見る。回収率で牝馬が上回るのは「まだ買われ足りない」からです。すでに牝馬が人気を集めているレースでは、妙味はオッズに織り込まれて消えています。狙い目は、力があるのに人気が足りない夏の牝馬です。
  • 季節は一年で一巡する材料。夏のうちに先回りして拾い、秋が深まったら通常評価へ戻す。この切り替えを毎年繰り返すのが基本で、一度効いたからと一年中引きずらないようにします。

まとめ

「夏は牝馬」は、地方競馬でもはっきり成り立っていました。牝馬の勝率は冬を底に夏へきれいに上昇し、8月にピーク。混合戦での牡馬との差は夏だけほぼ消え、しかも回収率では夏の牝馬が牡馬を上回りました。

格言を「なんとなく」で使うのではなく、夏は牝馬を買い、冬は割り引く。真夏を待たずに初夏から先回りし、秋が深まる前に手じまう——というメリハリまで意識できれば、より効果的です。出走表の性別欄と開催月という、誰でも一目で分かる情報の組み合わせが、評価のさじ加減を変える根拠になります。古い格言ほど、信じる前に一度データで裏を取る価値がある。今回の検証は、その手応えをはっきり残してくれました。

古い格言をデータで検証するコラムを、ほかにも公開しています。

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よくある質問

Q. 牝馬限定戦を除いたのはなぜ?

A. 牝馬の勝率が実態以上に高く見えるのを防ぐためです。牝馬しか出ないレースでは必ず牝馬が勝つので、含めると数字が水増しされます。「牡馬と比べて牝馬がどうか」を正しく測るため、牡馬と牝馬が同じレースで走る混合戦だけを対象にしました。

Q. なぜ夏の牝馬は回収率まで高いのですか?

A. 強さのわりにまだ買われ足りないからです。回収率は人気(オッズ)を織り込んだ数字なので、夏の牝馬が牡馬を上回るのは「オッズが甘い」サインといえます。「夏は牝馬」は知られていても、市場が完全には織り込めていないわけです。

Q. そもそも「夏」とはいつからいつまでを指しますか?

A. 本記事では3〜5月を春、6〜8月を夏、9〜11月を秋、12〜2月を冬として集計しています。ただ月別に見ると牝馬の上向きは梅雨入り前の5月から始まり、秋口の9月まで高水準が続きます。カレンダー上の「夏」より少し広く、初夏から秋のはじめが牝馬を見直す時期とイメージすると実戦的です。

Q. 「夏は牝馬」は地方も中央も同じですか?

A. 方向は同じですが、効き方の度合いまで同じとは限りません。もともとは中央でよく語られてきた格言で、本記事は地方でも成り立つかを確かめたものです。地方でもはっきり数字に出ていました。ただし開催の仕組みや馬場、クラスが違うため、地方競馬の混合戦を集計した結果として読んでください。

※ 牡牝混合戦(牝馬限定戦を除く)における牡・牝の成績を季節・月別に集計(2021-01-01〜2026-06-30)。回収率は100円購入あたりの払戻平均。過去データの集計であり将来の結果を保証しません。馬券は20歳になってから自己責任で。

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